2019年08月22日

「奈良、時の雫」第2回「祈り」保山耕一さん上映会

8月3日(土)保山耕一さんの作品上映会の第2回「祈り」が奈良公園バスターミナルで行われました。この催しは当会とコラボで月1回第1土曜日に開催されています。

7月の上映会では、予想をはるかに上回る来場者でした。入場できずに帰られた方、会場ロビーのモニターで観られた方続出!(音は出なかったけれど映像だけでもと…)ということで、まずは本番10分前の反省会から始まりました(もちろん今回も満員御礼!)

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本番10分前の反省会
前回のことを誠心誠意お詫びされる保山さんと『ならどっとFM』社長の中川直子さん。何度も何度も申し訳なさそうに頭を下げられていました。「ならどっとFMって本当少ない人数なんです。最低賃金かと思うくらいで運営されていて。奈良って本当スポンサーがつかない。」と本音をちらり。

「でもね、そういうスポンサー・大企業に頼らないで、カンパが集まらなかったら自腹でやる!」「皆さんがスポンサーで、皆さんの力で成り立っているんです。前回のカンパのお陰で、あと2回分は開催できます。」

「いつも『ありがとう』ってよく言われるんですけど、こちらが『ありがとう』なんです。ほんまに!」って。「僕は奈良の魅力を発信したいんです。」と強いお言葉から、保山さんの真心が伝わってきます。「『三方よし』って言うじゃないですか。奈良県とゲストの方々とお客さん。そうやって成り立っていけるといいなって思っています。」

そして、前回の上映会を終えた後に届いたメールやハガキのお話をしてくれました。「NHK『こころの時代』を拝見。車で2時間かけて行きましたがすでに満員!入れませんでした。会場ロビーのモニターを観て、『良かったなぁ、良かったなぁ』と感動して帰りました。」というご夫婦を紹介。

保山さんは「会場の外の音の入らないモニターで映像だけを観て『良かった、良かった』って言わはるんですよ。そして2時間もかけてまた帰っていかれる…僕はもう夜も眠れないほど自分を恥じました。涙が止まりませんでした。今も…」と。

図書情報館、国営平城京跡歴史公園からのお知らせ
ここではまず、県立図書情報館の伊藤さんを紹介。「ここの手作りのチラシ、すごく面白いんですよ〜」って保山さんお薦めです。続いて平城京跡歴史公園の夏休みイベントのお知らせや奈良公園バスターミナル竹田博康室長の「ワンポイントまほろば講座」。今回は奈良公園のディアラインのお話でした。

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五條のひまわり
さて、いよいよ「五條のひまわり」の映像です。こんなに美しくなつかしい日本の原風景が奈良に残っているなんて!それもピアニスト・すみかおりさんの生演奏とコラボで観られるなんて。やっぱり本当に贅沢‼(ご覧になりたい方は、なんと!保山さんはYouTubeで発信して下さっていますよ〜(^^))

うっとりとしていると、おやおや、次は我がソムリエの会副理事長・雑賀耕三郎さんの登場です。

奈良百寺巡礼〜安部文殊院〜

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当会ベストセラー本『奈良百寺巡礼』から毎回1つのお寺を選んでご紹介という企画。雑賀副理事長は「今日の映像を持って浄土に行けば、えん魔様が『おぉ、こんな映像を持ってきたのか。許してやろう』とおっしゃって下さるのでは?」と言われると、会場はどっと笑いにつつまれていました。そして、この日の本の売れ行きは約100冊!

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今回は、安部文殊院の植田悠應(ゆうおう)副住職をお招きしてのトークタイム。お寺のご由緒や「三人寄れば文殊の知恵」のこと、受験生だけでなくボケ封じのことも話されました。そういえば、ボケ封じのお話では、日頃の生活で良くない習慣を教えて下さいましたよ。

「一番良くないのが、テレビの見過ぎ!情報が一方通行ですから」と。そして「一番危険なのがテレビに喋りかける人」ですって(会場では苦笑いする人がチラホラ)。ちなみに、良いことは「旅に出ること」だそうで「いろいろ想像したり、次はどこへ行こうかとか考えるのがいいんですよ」ということでした。

安部文殊院といえばお花!にも注目です。毎年9月中旬にはコスモス迷路ができあがります。実はこの迷路、年々出口へ抜け出るのが難しくなっているようで、中で助けを呼ぶ人もいるそうです(会場:笑)また、パンジー8000株で作る干支も大人気です。この干支は安部文殊院ホームページに掲載されているので、次の年の干支を年賀状に使われる方もいらっしゃるとか(なるほど!グッドアイデア)。

保山さんいわく「撮影に行った時、植田副住職がドロドロになって、コスモス迷路を自分で作ってはるんですよ。業者の方かと思いました」(会場:笑)「でも、ドロドロになって、汗だくになって作業してはるお姿を見ただけで、『あぁ、いいお寺やなぁ』と思いました。」「おもてなしは、あえて大和茶!黙っていたらわからない。コストをかけてでも大和茶を出したいというその思い!その心配りに僕は撮影に行っても癒されるんです。」と。

「『どんな時でも迎えてくれる』これが奈良のお寺のいいところです。」「皆さん、ぜひ足をお運びください。」とおっしゃっていました。

そして、会場は一気に今回のテーマ「祈り」へのいざないに変わります。音楽は一切流れることはなく、ひたすら植田副住職の声明。その声の響く中、流れる雲、清らかな水、風、山、安部文殊院本堂、境内、渡海文殊群像、月、雲、額の汗・・・もう会場は静まりかえって祈りの場に!あちこちで手を合わせる方がいらっしゃいました。

そして、保山さんより来月(9月7日)の予告
「来月は聖林寺です。(9月チラシの写真には観音様の美しい指)この手を見ただけで、優しさが伝わります。」「けれどね、びっくりするくらいお寺に人が来ないんですよ。」と。そして「映像詩は『かすがの煌めき(きらめき)』。今から3年前に僕が遺書として春日大社に奉納した映像です。まぁ一度奉納したものなんですけど…これが最後です。」と。(次々に観たい映像を予告される保山さん。そりゃぁ皆さん観てみたいと思われますよ〜)

「9月からは上映会チケットが1000円になります。その一部をお寺に寄進します。耐震工事のお金がないんです。1人でも多くの人から多くのお金を集めて、お気持ちを頂いて建築費にあててほしいということになりました。」「皆様どうぞよろしくお願いします。」とおっしゃっていました。

休 憩(休憩を挟むと見慣れない楽器がステージに並んでいます)
映像詩:蓮

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野田真喜子さんのクリスタルボウルの生演奏に合わせて「映像詩:蓮」が始まりました。なんとも言えない心地良い音色にお客様の脳にはアルファ波が出現したのでは?しかもこれが保山さんの映像とピタリとはまる素敵なコラボ!

和蝋燭(ろうそく)の祈り
次は海龍王寺のイケ住(じゅう)こと石川重元ご住職と保山さんのトークです。石川ご住職は「保山さんのカメラからは〈圧〉が来るんです。カメラからくる〈圧〉に負けてしまうのです。保山さんは、観音様の前で全く別人になります。ごまかしが通じない。自分の120くらいを出さないといけない。自分の持っているもの以上を出さないと映らないんです。」とその時を振り返ってお話下さいました。

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保山さんは「蝋燭(ろうそく)の灯りだけで観音様を照らすには、どこでどう撮ればいいのか」と考え続けます。「蝋燭は、日本に仏像が入ってきた時に一緒にやってきて、仏像を拝むために作られたのだから『蝋燭一本だけの灯りで新月の日に祈りましょう』」ということにたどり着き、そこから石川ご住職とのつながりが始まります。

石川ご住職もどのようにすれば、仏様への想いを伝えられるのだろうと考えていた時に保山さんから提案があったそうです。「大きな和蝋燭1本で仏様がほほえんだり、怒ったりしているお姿を映し出す。仏像だからこその灯りを保山さんの映像によって奈良時代の再現ができたのです。」と。

保山さんは「キーワードは『畏怖の念』なのです。物が残ればいいというのではないのです。」と「心がどう伝承されるかが大切!」と強く訴えておられました。

石川ご住職は、この夏、親子での修学旅行企画をされています。「子ども達もものすごく敬虔になるんです。背中はピシッとなります。仏様は見ている子どもの心にも訴えかけるものがあります」と。子ども達に祈りの本質を伝える機会を増やそうという活動もされているそうです。

保山さんはご住職のことを「平城京のために!残したい奈良のために!何ができるのかとこの暑い時に走り回ってはるんです」。そして「地域のために!地域とともに!『イケ住』のこと尊敬しています」とおっしゃっていました。また「明日も東京のまほろば館へ行くらしいんです。何事にも全力!東京では食べ歩き、グルメ情報まで取材してくるんですから。やりすぎ!」(笑)

でも「自分でやらないと納得できない。自分で見てきたこと、聞いてきたことを伝えたい。可能な限りやっていきたい」とおっしゃるご住職に、保山さんは共感し尊敬されていました。

20年目の祈り ―なら燈花会 2018−

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ここでは、なら燈花会の会4代目「直前」会長の中野聖子(さとこ)さんとのトークから。「今年21回目、奈良の夏の風物詩になってきました。最大10万個、毎日つけて、毎日消します。警備代だけは出してもらいますが、あとは全てボランティアです」と。

最初企画案を出した時は、「木造建築の多い奈良で、裸火でそんなことをして、奈良公園を燃やす気か!」と怒られます。「灯り1つに消火器1つ置きなさい」と無茶を言われてしまいます。「でも、あきらめなかった!!」コップに水を入れ蝋燭を浮かべたら自動消火器になるという仕掛けを作ってOKをもらいます。「電気でスイッチオン!とつける灯りとは違うんです。このお祭り100年200年と蝋燭の火を灯すイベントだといいな」と中野さん。

保山さんは「春日大社前権宮司の岡本彰夫先生は『祈りのあるところなら1000年、2000年と続きますよ』と言われました」「無意識のうちに手を合わせてしまう不思議さ、真夏の夜をぜひ楽しんで下さい」と。

そして、保山さんは今回の映像のことを「夕日、鹿の表情、鳥が鳴いて春日大社と一体化していく。燈花会のあかりを通して、寄せ合っている、寄り添っている、そういう気持ちで撮りました」。「生かしていただいてありがとうございます!」と心をこめておっしゃっていました。

また「自分が地域に貢献できたのも中野さんのお陰」と言われて「中野さんの生き方にあこがれたんです。いきいきと地域のために生きて、まわりの人に愛されて。僕はなんで今までこういう生き方をしてこなかったんや。自分のことばかりやった」と。

こちらは、野上朝生(ともお)さんのピアノと平岩雅子さんのソプラノとコラボ!胸の奥まで響く生演奏です。たっぷりと堪能させていただきました。

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保山さんは「元気なうちにこの奈良公園バスターミナルにグランドピアノを入れたい」と次の夢を語られます。「ピアノ祭りをしたいんです」「世界的なピアノを屋上へ持って行って、ちょうど夕日の時に演奏するんです」というのです。会場からは「わぁ〜!」と歓声。「スポンサーは皆さんです。大仏様を造られた聖武天皇のようにというと大それていますが、そういう心で。子どもも100円という気持ちで。」(会場の方の笑顔、笑顔。もう賛同する気になっていますよ〜)

「僕が『奈良はこんなに素晴らしいところです』って発信したら、あるご家族からメールをいただきました」と。「僕の映像を観てもらうのがあと2日早かったら…という思いがあったり…」「実は、東京からお父さんと娘さんの親子二人で来たかったらしいんです。娘さんはうつ病で…YouTube見ていてくれたらしいんですけど…自殺されて…」と。

また、余命2,3日の方で、奈良で生まれ奈良で育った方が、亡くなる前に氷置晋さんと作った僕の映像を観たいと言われて、送らせてもらいました。そして、それを観てから亡くなられました…、そういう出会いもありました。」保山さんは「私は皆さんの想いの中で支えられています。私は撮るだけ!行けるところまで行かなきゃ!そう話してくださいました。


最後は「桜」です。保山さんは「長谷寺の本堂から迎えられる桜。な〜んか楽しそうに大空に舞い上がって、ひとしきり舞った後、最後は本堂の仏様のところに飛び込んで行く」そう優しくおっしゃっていました。祈りをのせて散る桜は人々の心の奥の奥にまで舞っていくことでしょう。

保山さんの映像は、奈良の景色はこんなにも美しく素晴らしい!と気づかせてくれます。今回もたくさん温かい拍手が、会場いっぱいにいつまでも響いていました。保山さん、素敵なひとときを本当にありがとうございました!そして今後の映像、企画も楽しみにしてるファンは間違いなく多いことでしょう(^^)

(盛り沢山のプログラムにどれもこれも魅せられて、全部書いてしまいました。長いレポートなのに、最後までお読み下さった方ありがとうございました。)


文:広報G 増田優子 写真:鉄田憲男



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2019年08月17日

保存継承グループ 十津川村:十津川の大踊り(小原地区)見学記

十津川村は奈良県の南端に位置する日本一大きな村として有名です。豊かな自然を持ち、村内の小辺路、大峯奥駈道は平成16年(2004年)に世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素として登録されました。十津川村の小原、武蔵、西川の3地区には、室町時代に流行った風流踊りの流れをくむ「大踊り」と呼ばれる盆踊りが伝承されており、国の重要無形民俗文化財に平成元年(1989年)に指定されています。

十津川の大踊りのスケジュールは次の通りです。
8月13日=小原地区(会場:十津川第一小学校)
▽同14日=武蔵地区(会場:武蔵公民館・旧武蔵小学校)
▽同15日=西川地区(会場:西川第一小学校)
時間はいずれも午後8時から4時間ほどです。

令和元年の盆踊りは台風10号の影響を受け、参加した小原地区の大踊りは小学校の近くにある公民館で予定通り午後8時から行われました。
小原盆踊りは木曽節に始まり、串本節、ヨイショコラコラ、つばくら口説き、お杉口説き、天誅おどりなどの順番に行われ、最後の大踊りまで全26曲に渡り行われます。踊り子らは、両手に扇子を持ち太鼓と曲の詩に合わせて老若男女、大人から子供まで村人に限らず見学者すべて参加することができます。
当日は、会長さんの計らいで通常は最後に行われる大踊りを16曲目に入れて下さり、午後10時すぎには目的の大踊りを見学することができました。大踊りは他の曲より踊る時間が3倍ほど長く約20分に渡って行われました。


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<台風10号の影響で県南部は雨模様。十津川を代表する谷瀬の吊り橋>

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<外は雨のため、公民館の室内が会場となりました。盆踊りは午後8時に開始。天井には切子燈籠(きりことうろう)がかかっています>

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<壁には大踊りの詩が掲示されていました>

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<小原地区の盆踊りのしおりを役員さんから見せて頂きました>

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<踊りの調子を行う太鼓と詩。純粋に素朴な雰囲気が会場に漂い独特な伝統行事でした>

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<村の子供たちも両手に扇子を持ち一生懸命に踊っていました。大人になってもいい思い出になっていくでしょう>

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<国の重要無形民俗文化財の大踊りは太鼓が中心となっています。会長さんの計らいで午後10時過ぎから大踊りが行われました>

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<太鼓方を中心となり大踊りを行う踊り子たち>

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<大踊りは太鼓の音色が館内に響いていました>

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<大踊りの盛り上げて頂いた子供たち。手には村人手作りの切子燈籠をもっています>

今回初めて見学させていただいた十津川村小原地区の盆踊りは、通常の盆踊りと異なり、太鼓を中心に囃子との組み合わせで行われ、伝統行事にふさわしい踊りを拝見することができました。村の方々も厚くおもてなしをして頂き感謝をしています。

十津川村は県南部に位置し、橿原市内からだと片道2時間半程度の時間がかかります。来年参加される方は、早くから村内で宿泊施設の確保されることをお勧めします。


文・写真  保存継承グループ  橋詰輝己
 

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2019年08月15日

女性グループ(ソムリエンヌ)夏休み家族体験教室「超難解⁉ホンモノの土器接合とカラー拓本にチャレンジ!」

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8月4日(日)歴史に憩う橿原市博物館と女性グループ(ソムリンヌ)・啓発グループの共催企画、夏休み家族体験教室2019「超難解⁉ホンモノの土器接合とカラー拓本にチャレンジ!」が開催されました。
今年は17名のご家族が参加されました。
3年目を迎える恒例の夏イベントは、本物に触れられる貴重なチャンスです。

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ソムリンヌ扮する、橿原市観光PRキャラクターさららちゃんがお出迎えです。
鸕野讃良皇女(後の持統天皇)がモデルの活発でハツラツとした女の子をイメージしています。
学芸員の竹鼻氏より本日のイベントスケジュール説明のあと、立体駐車下に移動。
ここではテーブルに並べられた、新堂遺跡(5世紀前半)から出土した土器片を使って接合体験です。

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遺跡から出て来る土器はバラバラになっているので、もとの形がどんな形だったか?頭でイメージしながら立体パズルのように復元していきます。

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「ここがつながる?ここがくっつく?」皆で頭ををひねります。
土器に残された模様や色などの手がかりから、元の土器の形を目指します。

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難しかった分、「出来た!!」と、完成したときの喜びはひとしお!

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土器接合体験の後は、資料整理室で古代瓦のレプリカを使って、オリジナルのカラー拓本に挑戦します。瓦に関する簡単な基礎知識の解説のあとは、ソムリンヌが作成した瓦に関するクイズを子ども向けの紙芝居にしました。いくつ答えられるかな?
問題
@橿原市のマスコットキャラクターのモデルは?
A藤原宮の建物に使われた瓦の数は?
B重い瓦は遠いところからどうやって運んだのかな?
C軒丸瓦の模様は何の花をデザインにしたのかな?
D瓦の役割は??

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クイズのあとはいよいよ瓦のカラー拓本に挑戦です。
配られた紙を瓦の上に乗せて水を吹きつけ、中央から端に向けて空気を丁寧に抜きます。
紙が破れないよう、力の入れ方に注意です。
ある程度紙が半乾きになったら、タンポを使って絵の具で好きな色で彩色していきます。
色紙に貼った拓本は、夏休みの思い出の作品となりました。

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イベントのフィナーレは恒例の奈良まほろばかるた大会です。

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5つのグループに分かれて競い合いました。皆で一つの札を追いかけるうちに、参加者同士の交流も深まり、終始和やかなムードで大会が進められました。
「奈良まほろばかるた」は、県内全域の寺社や史跡、自然や文化まで幅広いテーマで“奈良”が取りあげられています。かるた遊びをきっかけに、札の由来となった場所を見て歩くことで、奈良の良さ、面白さを知ってもらいたいと思いました。

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各グループの優勝者に「奈良まほろばかるた」のオリジナルカードが進呈されました。

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「土器にふれる事はとても貴重でよかった」「拓本もかるたも紙芝居も勉強になった」「かるた会がとてもたのしかった」「かるたを購入したい」などの声が寄せられました。



文・女性グループ(ソムリエンヌ)道ア美幸 写真・寺田麻美、友松洋之子

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2019年08月07日

女性グループ(ソムリエンヌ)自然の色を楽しむ・草木染めストール作り


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7月17日(水)女性グループ会員松浦さんのお宅をお借りして草木染め体験をしました。
草木染めをするにあたり、宇陀市産業企画課地域おこし協力隊の山本理愛さんを始めとする講師の方々が指導に来て下さいました。
今回はストールを染めるということで、まずはストールの柄選びから始めました。
事前に何種類か生成りのシルクのストールをご準備して頂きました。
各自、お好みのものを選び、染色開始です。

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今回講師の方にご用意頂いていた染料となる植物は、大和当帰、蓼藍、西洋あかね、など。植物の特性や魅力などのお話のあと、実際染めるとどのような色になるかをご説明頂き、各自染める色を決めました。

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まずは大和当帰から。
葉の部分や茎の部分を包丁でザクザクと刻み、水の中に放りこんで、沸かします。
しばらく沸騰させて、染色液を煮出していきます。
漢方薬などに用いられる当帰ですから、刻んでいる最中も、煮出している最中も、セロリのような強めの匂いがしてきました。

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十分に煮たら、濃い緑色の染色液ができ、葉や茎を鍋から取り出し染色開始です。
染色をする前に、あらかじめストールを水洗いして、その後、大和当帰から煮出した染色
液の中に投入します。色むらにならないように時々攪拌しながら、染めていきます。
なかなか根気のいる作業ですが、徐々に白いストールが染まっていくのを眺めているのは
楽しいものです。

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次はタデ藍です。
藍は葉の部分を染色に使います。茎から葉を摘み取り、ミキサーかけてすりつぶし、ガーゼで漉したものをボールにあけ、そこにお湯を適量いれて染色液を作ります。
ちなみに残った茎は根が出るまで水につけ、根が出たら土に植えるとまた藍が育ちます。
藍は比較的染まりやすく、染色液につけてしばらく攪拌していると、淡いブルー色に染まりました。

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続いて、ネムノキの染色です。
こちらは大和当帰と同じ要領で、葉を刻んで大きな鍋で煮て、染色液を作っていきます。
ネムノキは染色ができるほどの濃度の液を作るのに、長い時間煮出す事になりました。
今回この植物が染色液を作るのに一番長く時間を要しました。
その分、こちらの色を選択したソムリエンヌはこの色に愛着が強かったようです。

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続きまして、西洋あかね。
こちらはあらかじめ西洋あかねの粉末を用意して下さっていたので、
お湯に溶かして染色液を作り、そこにストールを入れて、攪拌しながら染色をします。
ひとつの染色液に入れて単色に染色したり、ストールを半分ずつ別の染色液につけて2色にしたり、出来上がりを想像しながら、草木染めを楽しみました。
ある程度、ストールに色がつくと、染色液の中から取り出し、水洗いをし、ミョウバンを溶かした液の中に入れます。発色を促進する効果があります。
しばらくミョウバン液につけた後、よく水洗いをして、乾かします。

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朝から没頭していた染色も、お昼をまわるとお腹がすくもので・・・
お楽しみのお食事タイム♪
松浦さんと松浦さんのお友達のお手製のお料理がテーブルいっぱいに並ぶ並ぶ!!
ワンプレートに盛り付けされた数種類のおかずには自家製のお野菜がふんだんに使われており、具だくさんのお素麺、黒豆やじゃこを混ぜたおにぎり、デザートには
夏らしい爽やかなハーブを使ったゼリー、どれもこれも絶品でお庭に何枚を干されたストールを眺めながらソムリエンヌで囲む食卓はとても賑やかで、やり遂げた充実感(笑)もあり、お腹も心も満たされました。

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お腹を満たした後は、乾いたストールをかけてみんなで記念撮影。
染色したてホヤホヤのストールを首にまいて帰るソムリエンヌがいたりと、初の草木染め体験はとても楽しく、また自然の植物の持つ力を感じました。

文・女性グループ(ソムリエンヌ)中村優佳 写真・道ア美幸


posted by 奈良まほろばソムリエ at 22:35| Comment(0) | 女性G | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

保存継承グループ 奈良市:伝香寺の「地蔵会(着せ替え法要)」見学記

7月23日の地蔵盆には、全国各地で多くのお地蔵様が供養されますが、奈良市小川町の「やすらぎの道」沿いに建つ伝香寺では、お地蔵様の衣の着せ替え法要が行われます。

伝香寺は、770年頃に鑑真和上の弟子、思託律師によって創建された実円寺(律宗)が元になっています。
その後荒廃しましたが、1585年に筒井順慶の母、芳秀尼が、36歳で死んだ息子を悼み、筒井氏一族の菩提寺として再興しました。

通常は一般拝観出来ませんが、「散り椿」が見頃となる3月の日曜祝日と、3月12日特別開扉の日と、この7月23日のみ、拝観可能になります。

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暑い最中の午後3時頃から、多くの参拝客が本堂内につめかけていました。

いつもは秘仏として地蔵堂の中に安置されている春日地蔵、またの名を「はだか地蔵尊」が、この日は、ご本尊のお釈迦さまに後ろから見守られながら、堂々と立っておられます。
このお地蔵様は、1228年に鎌倉仏師、善慶により造られたとされる像高97.3aの、木彫に彩色された裸像で、お坊さんのお話によると「明治時代の廃仏毀釈の時に興福寺から逃げてこられた」そうです。

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5分前に鐘が鳴らされ、4時ちょうどに4人の僧侶が入堂されました。
そのうち2人は興福寺の僧侶で、なんとドイツ系アメリカ人のイケメン僧がおられました。
伝香寺住職(唐招提寺長老)が、導師を務められます。

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10分ほどの読経の後、まず後光(光背)が取り外されます。次に錫杖と、宝珠を持つ左手が取り外され、袈裟や着物が1枚ずつ丁寧に脱がされていきます。

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お地蔵さんの衣装など着物1枚かと思っていましたが、とんでもない。腰巻、肌着、襦袢、袴、着物、袈裟と、人間の和装そのままです。
暑いお堂の中で大勢の人に注視されながら、手順を間違えないよう、美しいお姿になるよう、身動きできないお地蔵様の着せ替えをしていくのは、大変な作業でしょう。

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とうとう腰巻1枚のお姿になってしまいました。
「細くてきれいな足…うらやましい…」とのつぶやきが聞こえてきました。
さすがに腰巻の取り替えは、僧侶の体で隠すように行われました。

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肌着の上に、新しい真っ白な襦袢が着せられ、また1枚ずつ重ねられていきます。

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錫杖、宝珠、後光が取り付けられて完成です。
約20分間で、淡い緑色の衣装から、鮮やかなオレンジ色の衣装に着せ替えられました。
短い読経の後、4時40分ぐらいに法要は終わりました。

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前々回にお地蔵様が着られていた肌着を細かく切った一片が入っているというお守りです。
ちなみに、肌着以外は、クリーニングして再利用されるとのことです。

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お守りを買うために、本堂内に行列ができていました。
この本堂は、1585年の再興時建立のものだそうです。ご本尊の釈迦如来も1585年の作で、京都方広寺の大仏(焼失)のモデルになったと言われています。

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隣のいさかわ幼稚園では、盆踊りのために浴衣姿のかわいい園児たちが集まってきました。
いさかわ幼稚園の卒業アルバムには必ず着せ替え法要の模様が載せられるそうです。

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境内は、筒井家の五輪塔や、筒井順慶法印像を安置する順慶堂、散り椿の木、廃寺となった眉間寺の油留木(ゆるぎ)地蔵など、いろんな伝承に彩られています。
これらの伝承が、後世にいつまでも伝えられていくことを願って、伝香寺を後にしました。

文・写真  保存継承グループ 大谷巳弥子

posted by 奈良まほろばソムリエ at 20:30| Comment(0) | 保存G | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする