2013年03月16日

冬の奥飛鳥をたずねて

 冬の奥飛鳥を訪ねたくなり、2月の末、明日香村の石舞台古墳から祝戸橋を渡り、飛鳥川上流へと向かった。気温10℃、昨日までの寒さが嘘のように感じられるハイキング日和でした。
 歩いて20分ほどで稲渕集落の入り口 神所橋(カンジョウバシ)に着く。そこには太い綱が飛鳥川に渡され、その中ほどに藁で作った大きな筒状のものが吊り下がっている。雄綱という。この綱を勧請縄(カンジョウナワ)といい、正月11日に行われた綱掛け神事の際に作られ、飛鳥川に掛け渡された。五穀豊穣を祈り、悪病の村への侵入を防ぐために張られたものです。綱を掛ける木は、昔は松と檜に決まっていたそうですが、今みると、樫と柿の木でした。

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 <稲渕棚田>             <稲渕男綱>

 雄綱から飛鳥川の「飛び石」までほんの数分。歩いて渡るのにほどよい石が幾つか並んでいます。飛び石と呼ぶ石橋(イワハシ)です。万葉集に「明日香川 明日も渡らん石橋の 遠き心は 思ほえぬかも」と詠われ、古代のロマンが偲ばれます。

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 <飛鳥川飛び石>         <飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社>

 さらに遡ると、山間が狭くなって、川の音も大きくなり、川床には巨岩が横たわっている。そのそばに、縣社の飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社がある。見上げるほど高く長い石段に一瞬躊躇するも、意を決して上ること192段、そこは大きな杉の古木が天をさえぎり、厳かさを感じる神社です。皇極天皇が642年に「南淵の河上」で雨乞いをされたのは、きっとこのあたりであろうと思わせる雰囲気です。

 神社をあとに、更に進むと、ふたたび視野が広がり、田園地帯を見ながら栢森の集落に近づく。集落の入り口辺りに稲渕と同じように太い綱が飛鳥川に掛け渡され、綱の中ほどには、やはりわらで作った雌綱が吊り下げられている。今年は、正月14日に綱掛け神事が行われ、稲淵が神式で、柏森は、仏式で行われた。

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 <栢森雌綱>            <加夜奈留美命神社>

栢森は、川の合流点にあり、近くに式内社の加夜奈留美命神社が鎮座する。
ここから15分ほど登ると、女淵と呼ぶ滝がある。案内板によると高さ6mもあり、淵も滝の高さほどの深さだそうです。水しぶきが美しく、神秘的で、水はどこまでも碧く、清らかな滝でした。

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<雪の残る女淵降り道>         <女淵の滝>

 さらに上には、男淵と呼ばれる高さ9mもの滝があり、女淵には雌の龍神が、雄淵には雄の龍神が棲むと言い伝えられてきたそうです。ここが雨乞い伝承地とありましたが、そのように感じさせる雰囲気が漂っていました。

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<女淵の滝2>             <雨乞い伝承地>

 「世の中は 何か常なる 飛鳥川 昨日の淵ぞ 今日は瀬になる」こう詠われた飛鳥川、集落の人たちは、水の神を慰め、飛鳥川の穏やかなることをひたすら祈り、五穀豊穣・子孫繁栄を願い続けたのでしょう。
 夏が過ぎれば棚田が黄金に染まり、畦道には赤い彼岸花が咲き乱れます。今年も龍神様のお蔭で豊かに実った稲穂を見に再び訪れようと思います。

                    広報グループ 豊田 敏雄
posted by 奈良まほろばソムリエ at 22:07| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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