2011年08月21日

奈良と芭蕉

奈良検定に松尾芭蕉の俳句の問題はよく出題されている。
私も芭蕉は好きなので頭の整理のため奈良で詠まれた俳句の一覧を作成してみた。

『芭蕉全句集』(角川文庫)の983句の中から前書・句から奈良で詠まれたことがわかるのは以下の37句である。(素人の洗い出しなので落ちがあればご教授願いたい)

項目は通し番号、句、底本、年次、場所の順である。年次順に並べてある。

01.うかれける人や初瀬の山桜      続山井
   寛文七年以前   初瀬
02.うち山や外様しらずの花盛      大和順礼
   寛文十年以前   内山永久寺
03.五月雨も瀬ぶみ尋ぬ見馴河      大和順礼
   寛文十年以前   見馴河 *1
04.木の葉散桜は軽し檜木笠       真蹟懐紙
   貞享元年   吉野の奥
05.冬しらぬ宿やもみする音あられ    夏炉一路
   貞享元年   大和国長尾の里
06.わた弓や琵琶になぐさむ竹のおく   野ざらし紀行
   貞享元年   葛城竹内 *2
07.僧朝顔幾死かへる法の松       野ざらし紀行
   貞享元年   当麻寺
08.砧打て我にきかせよや坊が妻     野ざらし紀行
   貞享元年   吉野の奥
09.露とくとく心みに浮世すすがばや   野ざらし紀行
   貞享元年   西行庵
10.御廟年経て忍は何をしのぶ草     野ざらし紀行
   貞享元年   吉野後醍醐陵
11.春なれや名もなき山の薄霞      野ざらし紀行
   貞享二年   奈良に出る道
12.水とりや氷の僧の沓の音       野ざらし紀行
   貞享二年   東大寺二月堂
13.初春先酒に梅売にほひかな      真蹟懐紙
   貞享二年   葛城竹内 *3
14.世ににほへ梅花一枝のみそさざい   住吉物語
   貞享二年   葛城竹内 *4
15.春の夜や籠り人(ど)ゆかし堂の隅  笈の小文
   貞享五年   初瀬
16.猶みたし花に明行(あけゆく)神の顔 笈の小文
   貞享五年   葛城山
17.雲雀より空にやすらふ峠哉      笈の小文
   貞享五年   臍峠 *5
18.龍門の花や上戸の土産(つと)にせん 笈の小文
   貞享五年   吉野龍門の滝
19.酒のみに語らんかかる滝の花     笈の小文
   貞享五年   吉野龍門の滝
20.ほろほろと山吹ちるか滝の音     笈の小文
   貞享五年   西河(にじかう) *6
21.桜がりきどくや日々に五里六里    笈の小文
   貞享五年   (吉野の)桜
22.日は花に暮てさびしやあすならふ   笈の小文
   貞享五年   (吉野の)桜
23.扇にて酒くむかげやちる桜      笈の小文
   貞享五年   (吉野の)桜
24.春雨のこしたにつたふ清水哉     笈の小文
   貞享五年   吉野山中の泉
25.潅仏の日に生れあふ鹿の子哉     笈の小文
   貞享五年   奈良
26.若葉して御めの雫ぬぐはばや     笈の小文
   貞享五年   唐招提寺
27.鹿の角先一節のわかれかな      笈の小文
   貞享五年   奈良
28.花ざかり山は日ごろのあさぼらけ   芭蕉庵小文庫
   貞享五年   芳野
29.はなのかげうたひに似たるたび寐哉  真蹟懐紙
   貞享五年   平尾 *7
30.里人は稲に歌よむ都かな       真蹟懐紙写
   貞享五年か   大和高田市あたり
31.初雪やいつ大仏の柱立        真蹟懐紙
   元禄二年   東大寺大仏 *8
32.びいと啼尻声かなし夜の鹿      笈日記
   元禄七年   猿沢池のほとり
33.菊の香やな良には古き仏達      笈日記
   元禄七年   奈良の都
34.菊に出てな良と難波は宵月夜     笈日記
   元禄七年   奈良の都
35.菊の香にくらがり登る節句かな    菊の香
   元禄七年   暗峠
36.菊の香やならは幾代の男ぶり     杉風宛書簡
   元禄七年   南都
37.奈良七重七堂伽藍八重ざくら     泊船集
   年次不明   奈良

*1 見馴河は『類字名所』に大和の国とあるのでここに含めた。句碑は伊賀上野市岩倉峡(木津川)にある。
*2 竹内村は『野ざらし紀行』の伴をした苗村千里の郷里。句碑「綿弓塚」は文化6年の建碑。
*3 葛城市営の綿弓広場は江戸時代からあった高松酒造の建物を平成4年に整備したもの。
*4 竹内村の医師明石玄随への挨拶句。玄随の号「一枝軒」にちなむ。
*5 多武峯より龍門へ越える道
*6 吉野川上流の早瀬
*7 細峠から吉野への途中
*8 造営中の大仏殿は元禄3年に仏頭が造られ、柱立ては同10年、落慶は宝永6年(句が詠まれてから20年後)であった。

検定受験の準備に使われるのもよいし、句碑を訪ねる資料など参考にしていただけばありがたい。

by 佐吉多万比古


posted by 奈良まほろばソムリエ at 12:51| Comment(3) | 他国便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月17日

万葉集−うけらの花

恋しけは袖も振らむを 武蔵野のうけらが花の色に出な ゆめ

[原文]古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米 (巻14・3376)

[大意]恋しいなら私が袖を振りもしよう。決しておまえは恋心を顔色にあらわしてはいけません。(『日本古典文学大系』)
    恋しかったらせめて袖を振って合図するぐらいにしてほしい。武蔵野のウケラの花のように色に出さずに。(田中澄江著『万葉の花ごよみ』)

   ――――― ・ ――――― ・ ―――――

自宅から歩いて2〜3分のところにある万葉関係の市指定史蹟「うけら庵跡」を紹介する。(埼玉県和光市本町16-27付近)

『新編武蔵風土記稿』(1830年完成、全266巻)に「もと墓守の僧を置ん為に作りし庵なりと云、土人の伝えに此辺古へ武蔵野の内にても、わきてうけら野とてうけらの多く生ぜし所なりければ古きを失はじとてかく庵の名とせり、云々」とある。

「うけら庵」の建立は天明(1781〜1788)の初期で、鈴木家六代目松蔭の手によるといわれ、六畳二間のものであった。化政期(1804〜1830)大田蜀山人、北川眞顔など当時の著名な文人墨客が集まり、詩歌の会、顧客の会などを開き、文化交流の場として栄えた庵であったと伝えている。(現地説明板による)

ukeraan.jpg
       ↑
現在のうけら庵と鈴木家墓地(2011年7月18日撮影)

今のうけら庵は町内会館のような機能で、鈴木家は今も連綿と続いている。
「うけら」は「おけら」ともいわれ、キク科の多年草で春に宿根から若芽を出し約50cm位に成長する。秋に茎の先端に白色またはうす紅色の花が咲く。
→こんな花である−

うけらの名を冠した行事としては上野公園の五条天神社の白朮(おけら)の神事がある。『江戸名所図会』にも記載のある節分祭で、うけらを焚いて煙のたなびく方向によって吉凶を占い、若芽を入れたうけら餅を授けて無病息災を祈願するものである。

by 佐吉多万比古
posted by 奈良まほろばソムリエ at 20:18| Comment(0) | 他国便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月06日

奈良まほろば館

東京日本橋の三越本店向いの奈良まほろば館は奈良県の在京アンテナショップである。主な機能は次の3つで、関東の奈良ファンには拠り所になる施設である。

1.奈良の特産品販売・・・奈良漬、くず餅、せんとくんグッズなどなど。大和野菜の直売もある。大和まな、香りごぼう等を実際に食べて覚えよう。
  お土産に白雪布巾を差しあげた近所の奥さんから使い勝手がよいので買い足したいと言われ教えたこともある。
2.奈良の観光情報・・・パンフレットやパネル展など
3.奈良関連の各種文化講座開催

まほろば館
  ↑奈良まほろば館の外観

売店には友の会事務局長お薦めの熨斗食品「たいぶつ納豆」もある。80g¥120
奈良で買って来るには冷蔵などの点が問題なので重宝する。

納豆
  ↑桜井市産の大豆がふっくらとおいしい!

<おまけ情報>
大多数を占める関西在住のソムリエの方には東京土産として早川光著『東京名物』にも紹介されている天野屋糀店の「芝崎納豆」をお薦めする。160g¥368
天野屋は神田明神前にあるのだがご心配なく。まほろば館向いの三越本店地下1階の食品コーナー[味匠庵]でも購入できる。

by 佐吉多万比古
posted by 奈良まほろばソムリエ at 19:15| Comment(0) | 他国便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月27日

関東の会員の集まり

関東の会員の皆様の集まりがありました。
下記のように報告がありましたので、ブログに載せさせていただきます。(teru)


奈良ソムリエ友の会関東交流会報告

日時:2011年07月24日(日)15:10〜16:45
場所:奈良まほろば館2階

万葉集の講演会の後、セミナー会場をお借りして関東メンバー7名の
顔合わせ会を行った。

まず自己紹介をそれぞれしたあと今後の活動について話し合った。
1)未入会者への働きかけ・・7名では少ないのでやりたい
2)当面は親睦を深め、本部からの企画があれば協力する。

3)奈良検定の普及
関東では奈良検定の情報がない、書店にもテキストを置いていない。
奈良通2級の検定は東京でも受験できるのでもっと情報発信したい。
関東で受験しようとしている方々をサポートする企画はできないか。

4)関東における古墳・飛鳥・奈良時代を感じるコース
 −−古墳・国分寺などを中心として
・モデルコースを作成する
・できればツアーを企画する

5)情報交換――各自のブログ、ホームページのURL交換。
各自の奈良情報・ニュースをメーリングリストなどで交換する。

次回の予定:10/15(土)詳細は後日連絡。それまでに今後の活動に
 ついてのアイデアを考え連絡係の方宛に集める。

posted by 奈良まほろばソムリエ at 16:52| Comment(0) | 他国便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月24日

発掘された日本列島2011

毎年恒例の「発掘された日本列島」展が今年も江戸東京博物館ではじまっています。
常設展の一角にある展示室に入ると、目の前に藤原宮造営で破壊された四条古墳群から出土した埴輪や木製品がズラリ。

110725.JPG

写真撮影OKだったので、携帯のカメラで撮ってみました。鳥型木製品です。
はじめて胴体と羽が組み合わされた状態で出土したそうです。他に力士型や盾型の埴輪や、儀杖型の木製品など。
奈良関係ではもうひとつ、平城宮東院庭園の特集展示で庭園の復元模型や出土物が展示されていました。
文化庁の担当の方の説明によれば、東院庭園の現地での復元は発掘調査の結果を忠実に再現し、石などは発掘されたものをコーティング処理したりして、そのまま使ったりしているとか。
ちなみに、展示された模型は少し古いもので、現地復元のほうが新しい発掘結果を取り入れているとのことで、よく見ると、確かに模型には「曲水」の溝がありませんでした。
奈良以外の展示物で目を引いたのは、昨年ニュースなどでも話題になった滋賀県東近江市で発掘された最古の土偶。
写真で見てもピンと来ませんでしたか、実物はかなり生々しい「女体」でした。

江戸東京博物館での展示は今月いっぱいで終ってしまいますが、その後、新潟、静岡、福岡、高知を周ります。関西地域では開催されませんが、図録はすでに書店に並んでいます。

by AYU
posted by 奈良まほろばソムリエ at 16:32| Comment(0) | 他国便り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする